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遠山健太の運動子育て対談 アスリートに聞く好きなスポーツの見つけ方

【元プロテニス選手 松井 知代さん-後編-】幼児期はスポーツの 楽しさを味わうが一番。一つに絞るのは小学生になってから

子どもに好きなスポーツを見つけてあげたい。そう願う親御さんは多いでしょう。そこで、トップアスリートたちに、いつどんなきっかけでそのスポーツを始めたのか、親は何をしてくれたのかなどをリトルアスリートクラブ代表トレーナー遠山健太がインタビュー。
第1回は、現在、大坂なおみ選手や錦織圭選手の活躍で注目されるプロテニス界で活躍した松井(旧姓高岸)知代さんの登場です。後編では、現在6歳になる息子さんの運動子育ての様子を伺います。

幼児期は子どものやりたい運動をいろいろ体験させてみる

遠山:息子さんにはどんな運動をさせているのですか?

松井さん:息子がやりたいと言ったものはひと通り。サッカーをすることもありますし、体操とスイミングは同じスポーツクラブで。スイミングは私自身がそうだったように、ひと通り泳げればいいなと思っています。心肺機能も高まりますし。息子は跳び箱で小指を骨折したんですが、「治ったらかけっこをやりたい」というので、秋からかけっこ教室に通い始めたところです。

その教室では、200mを5本とかパラシュートをつけて走ったりとか、陸上部みたいにガンガン走るのですが、それが楽しくて仕方ない。2、3か月たって速くなってきたところです。参加しているのは小学生ばかりですが、相手が小学生でも上とは見ていなくて、絶対負けたくないと頑張っています。

遠山:ご両親がしているテニスはもう一緒にするんですか?

松井さん:長期休暇などに私と何日かやっています。そのときは、「できるだけ楽しく」ということだけを考えて、テクニック的なことはうるさく言いません。息子は走るのと同じように、ボールを打つ感覚がすごく楽しいみたいです。

すぐに試合形式のようなことをやりたがるのですが、とにかく毎ポイントネットへ出てきてボレーやスマッシュでポイントを取ろうとする。一度もそのようなことは教えてもいないので、これは完全に、パパの試合をたくさん見てきた影響ですね(笑)

息子さんにテニスを教える松井さん。「楽しく!」がモットー
息子さんにテニスを教える松井さん。「楽しく!」がモットー

子どもにやらせるスポーツを一つに決めるのは小学生になってから

遠山:いつごろ、スポーツを一つに絞ろうと考えているんですか?

松井さん:主人は小学1、2年生で絞ってもいいのではと言っていますが、私は3年生くらいでもいいかなと思っています。1年生のうちには泳げるようになるだろうし、体操や鉄棒はある程度できるようになってきたので、次のステップとしてサッカーとテニスをもう少し本格的にさせてみようと思うんです。

実は、テニス選手ってけっこうサッカーが上手なんです。特にヨーロッパや南米の選手は、自分のスパイクやユニフォームを遠征に持ってきていたりする。あとはゲームセンス。スペースを見つけてボールを出して走るとか、そういう感覚も必要になります。

遠山:確かに、スペースを見つける感覚は似ていますね。

松井さん:それと、サッカーはチームスポーツなので、自分だけでなくチーム全体のことを考えて動く力をつけてくれるといいなと思います。その上でテニスをやったら楽しいんじゃないかと。
親としてはそんな願望があり、そう導きたいですけれど、どうなるでしょう? 

サッカーも大好きという息子さん。お父さんとイベントに参加することも
サッカーも大好きという息子さん。お父さんとイベントに参加することも

遠山:願望としては最終的にテニスを選んでくれたらうれしい?

松井さん:テニスで、トップ選手を目指すかどうかは本人が決めればいいと思っています。ただ、テニスは、自分の進みたい道を決めるための武器、オプションとして持っていたらいいと思っています。本人は走ることも大好きなので、陸上という選択肢もあるかもしれません。

主人は自分がそうだったこともあって、ゆくゆくは海外に出したいと思っているんです。そういう場合も、テニスはいいツールになる。大学でスカラシップを受けるときも、他の競技よりもいいと思うんです。社会人になっても続けている人も多いですし、テニスを通してコミュニティを持ってくれたらいいですね。テニスとゴルフは生涯スポーツとして楽しめますから。 

遠山:医師がすすめるスポーツも、テニスとゴルフ。ゴルフは出かけて行く必要があるけれど、テニスはもっと気軽ですしね。なぜ、海外に出したいと思うのですか?

松井さん:主人はテニス選手としての経験や海外の人と接する中で、精神的にハングリーであることの重要さを感じているようです。たとえば、アメリカの大学では、競技レベルだけではなく学業の成績が悪ければ試合にも出れない、スカラシップの対象からもはずれてしまう。

息子がスポーツをすることが好きなので、それをツールに文武両道を進むのか、もしくはプロに向くほどのメンタリティを持っているのかを、世界には様々な人がいるという中で生き方を考えられるようになってほしいと思っているようです。

私の場合は中学1年生からテニスをして生きていくものと、生き方にほかの選択肢を考えませんでした。それがぴったり合う人もいると思いますが、実際プロとして経験した中で、プロテニス選手としてのセンスや性格的な向き不向きを感じるようになって、実は試合は好きではないし、勝負の世界にいる自分が好きになれないと苦しくなり、「プロテニス選手としてはもういい、辞めよう」と思ったのが早かったと思っています。なので息子には生き方は一つではなく、自分らしさを考えて自立してほしいと思っています。 

遺伝子検査の結果より、子どもの気持ち、性格優先でスポーツを選ぶ

松井さん:最近、遺伝子検査を家族で受けてきたんです。私も息子も瞬発系。データでわかった遺伝子の傾向は、息子と私、そっくりなんです。主人は瞬発力も持久力も持つ中間でした。息子には主人に似て、どちらも持っていたらいいなと思ってたんですけど、残念(笑)。でも、持久力はトレーニングで培われると思うので、瞬発系というのは悪いことはないと思いますが。

とはいえ、遺伝子検査の結果を見て、「瞬発系だから○○をさせよう」とは思いません。基本データとして頭にはインプットしておきますが、子どもがやりたいこと、子どもの性格に向いていることを優先してあげたいと思っています

遠山:そうですよね。私も親が決めつけてしまうのはどうかと思います。遺伝子検査の結果はあくまでも参考にしたいですね。現在、遺伝子研究はかなり進んできていて、遺伝子によってたとえば「肉離れが起こりやすい」など、どういうケガをしやすいか、といったこともわかってきているんです。トレーニングの仕方などに生かせることはありますね。

遊ぶ、食事、睡眠、スポーツ観戦。親ができることはたくさんある

リトルアスリートクラブ代表遠山と松井さん。同世代の子を持つ親同士、運動子育て論で盛り上がった
リトルアスリートクラブ代表遠山と松井さん。同世代の子を持つ親同士、運動子育て論で盛り上がった

遠山:うちには7歳の娘がいるんです。幼稚園のころは運動はデキるほうだったんですが、小学生になったらデキすぎる子が3人もいて(笑) 、運動会で1等をとれなくなった。トレーナーという職業柄、どうしたら勝てるのか分析したくなり、その子たちの運動会の80m走のビデオをとって、何歩で走っているのかを調べたんです(笑)。
その結果、娘に言ったのは、「背を伸ばすために、ごはんをしっかり食べて運動していっぱい寝ような」ということ。うちの娘は背が小さくて、勝てない理由はそこにあるので。

松井さん:さすが、トレーナーさんですね。スポーツ科学的な分析にも興味があります! それと、小さいころの睡眠はやっぱり大切! 成長には睡眠の影響は大きいと思います。うちの子の場合、まだ6歳なので10時間は必ず寝ていますね。私が母にしてもらったように、食事と睡眠は大切にしています。

遠山:自分の子どもにどう運動させたらいいかわからない人も多いんです。だから、○○式がいいんじゃないか、あっちの運動教室がいいんじゃないか。そんなふうにいろいろ迷う親御さんも多いんです。それを否定するわけではないのですが、親がやれることもたくさんあるはず。

松井さん:そうですね。一緒に遊んだり運動したりするのはもちろんですが、一緒にスポーツ観戦をするのもいいと思います。テレビでも伝わるスポーツもあると思うんですけれど、やっぱり会場に脚を運んで見るのは違います。スピード感もそうですし、躍動感、音とか。

遠山:今はそういうことができる環境がたくさんありますよね。国体とかだったら比較的手軽に見られますし。
バスケットボールの試合に行ったら、2mもある選手の大きさにに圧倒されます。

松井さん:そう。逆に、小さくても頑張っている人を見たら勇気をもらいますしね。私も息子もあまり器用じゃないほうなので、だからこそスポーツを通して努力することを自然と覚えられる。負けたくないから自然と頑張るんです。そういう体験が大切だといます。

前編はこちら↓↓↓
トップ選手のプレーを近くで観戦する。その感動は子どもに与えるインパクトが違う

松井さんから学ぶ
子どもにぴったりのスポーツを見つけるためのヒント

  1. たとえばサッカーとテニス。複数スポーツをやることは将来、どちらのスポーツをするときにもいい影響を与える
  2. 遺伝子検査はあくまでも参考程度に。子どもがやりたいこと、性格に向いていることを優先
  3. テニスはコミュニケーションツールとして役に立つスポーツ。身につけておけば将来、武器になる
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