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サッカー上達のために幼少期にやっておきたいのは楽しみながら“動きを鍛える“経験

今、世界で活躍する日本人選手たちも増え、サッカー好きの男の子が増えていますね。お稽古事としてもサッカーは大人気です。どうせさせるなら、サッカーを上達させたいと願う親御さんも多いでしょう。サッカーという競技特性から見て、幼少期にやっておきたいことをスポーツトレーナーの立場から解説しましょう。

子どもたちはなぜサッカーが好きになる?

子どもはボールを投げたり蹴ったりするのが大好きですよね! 僕も小さい頃に、親戚の家ではみかんをボールに見立てて家の中で蹴って遊んでいたそうです。「食べ物をそんなふうに扱うなんて」とお叱りを受けそうですが、当時は、家の中でもボール遊びのようなことがしたい、それだけの思いだったと思います。

子どもの発育発達の段階で、ボールに対する好奇心が芽生え、ボール遊びが好きになっていくというのは普通の流れです。
そこから、サッカー好きへと育っていく過程には、一緒にゴールを目指す一体感やゴールを奪った際の達成感、爽快感、ヒーロー感……などがあるからではないでしょうか? 実際、僕がサッカーを始めたきっかけは、2002年の日韓ワールド杯の決勝戦を観たときに、小学6年生の子どもながら、「なんだ、この選手と観客の一体感は! こんなにスゴいスポーツをやってみたい!」というものでした。

今となってはサッカー人気はかなりのもの。ワールドカップはもちろん、ヨーロッパ大会、アジア大会、南米大会…と注目が集まり、地上波での放送も増えてより身近になってきました。世界的に見ても、プロスポーツの興行収入でかなりの上位に位置づけされてきています。

サッカースタジアム

サッカーが上手くなるために重要なのは「股関節」と「背骨」の動き

サッカーが上手くなるために何が重要なのか? 皆さん気になりますよね。
トレーナー目線で動作を分析してみると、サッカーは「走る」「止める」「蹴る」という3つの動きが多いのが特徴です。さらに細かく見てみると、サッカーの競技特性上、「片足」と「つま先立ち」の瞬間がかなり多いのです。
走っているときはもちろんのこと、片足が地面に着いている(軸足)状態でのボールを止めるトラップ、着いている(軸足)状態でのボールを蹴るパスやシュート。反対の足を考えると片足が地面から離れている(蹴り足)状態での振り上げ動作など、どれをとっても「片足」と「つま先立ち」が多いのがわかると思います。

ボールを蹴ろうとする瞬間

そして、この動作をするために大事になってくるのが、「股関節」と「背骨1」の動きです。「なぜ背骨?」と思う方もいるかと思いますが、経験者ならわかると思いますが、パスやシュートの際にはかなり体を捻ります。つまり背骨は回旋の動きをしています。実は走るためにも体は捻られているので、私たちが気が付かないうちに、背骨の動きはかなりの時間行われていることになります。
1背骨=胸椎の部分を指す

サッカーの練習だけやっていても身につかないことがある

この重要な「股関節」と「背骨」の動きですが、幼少期からサッカーの技術の習得のみに重きを置いてしまうと、身に着けるチャンスを逸してしまう危険性があります。

子どものなかには、走るとき、かかとから着いて足裏全体が地面に触れて走る子もいます。ランニングやジョギングのように、速度が遅い走りであれば問題ありませんが、100m走のようなスプリント種目で、かかとから着いていると確実にスピードは遅くなります。そのような走り方になってしまうのも、「運動神経がない」のではなく、「運動経験がない」だけのこと。
幼少期からサッカーのみをしていると、かかとを上げた動きを学ぶことが少ないため、股関節と背骨の動きに制限が出てしまうことがあります。そうなるとサッカーが好きなのに上達スピードが遅くなり、途中でやめてしまうというケースも出てきてしまうのです。

サッカーボール

それなら、大人であれば「スクワットをして下半身を鍛えていこう!」と考えますが、子どもにその論理は成り立ちません。筋力がないために関節も不安定で脱臼しやすく、危険が伴います。

小学生までは複数スポーツをしていたほうが、実はサッカーも上手くなる!?

日本では、それぞれのスポーツの分野で、全国少年〇〇大会等を開催しており、小さいうちから英才教育で一つのスポーツを極めていくのが一般的です。
確かに小さいうちから一つのことをやっていれば上手になるかもしれません。実際、サッカーでは、ジュニア世代の強さは世界一と言っても過言ではないほど、優勝経験もあります。しかし、大人のA代表はどうでしょうか? 残念ながらグループリーグ突破さえ確実にできるというわけではありません。それだけヨーロッパや南米のチームが強いということですね。
その理由の一つに、幼いときから一つのスポーツに絞ってしまうこともあるのではないかと思います。

ここでは、複数スポーツ・運動体験が素晴らしいプレーを生み出していると考えられる選手の例をご紹介しましょう。

●武藤嘉紀選手 — 幼少期の複数の運動体験で育まれた体幹の強さ

まず、先日のアジアカップでグループリーグ、対ウズベキスタン戦に同点ヘディングをたたきこんだ武藤嘉紀選手です。
武藤選手は、幼少期から有名なスポーツ幼稚園に入り、サッカーをやりながら授業の一環としてたくさんの運動遊びやスポーツをしていたそうです。179㎝というけっして恵まれた身長ではないですが、幼少期の多くのスポーツ経験により軸をとることが無意識のうちにできているのでしょう。体幹がしっかりとしているので海外のサッカー選手にも当たり負けしていません。

●クリスティアーノ・ロナウド選手 — 卓球で鍛えられた抜群の動体視力

ロナウド選手の出身地であるポルトガルは卓球のプロチームが多くあり、実はロナウド選手はプロ卓球チームからスカウトを受けたことがあるそうです。僕が2年ほど前に観た特集番組は、仲間がクロスを上げてロナウド選手がゴールにヘディングをするという内容でした。最終的に仲間がボールを蹴る瞬間にスタジオのライトをすべて消しても、頭でピンポイントに合わせてヘディングをしていました。本人曰く、仲間が蹴る瞬間の態勢ですべての情報を得てそこから予測しているそうです。動体視力が優れていないとできない技ですね。

●福西崇史選手 — 器械体操や自然の遊びで磨かれたバランス能力

いったん現役を引退したのち、昨年、南葛SCで現役復帰し、2019年より南葛SCの監督を務めるという福西選手。日本代表としては、2006年のジーコジャパンで欠かせない選手でした。記憶に残っている人も多いのではないでしょうか?
福西選手はサッカーを始める前は器械体操をしていたそうです。また、幼少期は自然の中で遊ぶことも多く、山を駆け回り、海に潜る野生児だったと、あるインタビューで語っています。
サッカー選手としては、中学生の頃から地方選抜組には選ばれるものの、それほどは注目は浴びていなかったそうです。しかし、高校3年生のとき、相手チームの選手を見に来ていたスカウトが、「こんなに軸がしっかりしていてプレー時の姿勢が良い選手は見たことがない!」と惚れ込んで、プロ入りが決まったそうです。これも器械体操や自然の中の遊びで培ったバランス能力がかなり影響していると言えるでしょう。

日本のメダリストの中にも、中学生からその競技を専門的に始めたという選手がかなり増えてきました。言い換えればそれまではたくさんのスポーツを経験していろいろな体の使い方を学んでいたということになります。

幼児期は楽しく体の動かし方を学ぶのが大事

では、サッカーが上手になるために幼少期には何をすればいいのでしょうか? 大事なのは「遊びの中で体の動かし方を学ぶ」ということだと思います。
お子さんと一緒に遊び感覚で思いっきり走る、クマさんやカエルさんなど動物歩きをしてみる、公園に平均台的なものがあれば、そこでバランスをとってみるなどでよいのです。

ここではおすすめのボール遊びをご紹介しましょう!

サッカーでは特にボールを見て、ボールの正面に早く入ることがかなり大事です。
そのためにやっておきたいこと、最初のステップはアシカポーズです。

空を見て、おでこのキワにボールを置いて見続けるようにして慣れていきます。イメージはアシカショーのときのような状態です。
これでボールを見ることを覚えますし、「目をつぶらない」ということが自然と身に着いていきます。

次はボールキャッチです!

お子さんから1メートルほど離れて、親御さんがボールを左右に投げ、それをキャッチします。
まずは地面に投げて1バウンドのボール、次にノーバウンドのボール、そして最後は地面に投げて1バウンドのボールに回転をかけてみます。
それに対応できるようになったら、お子さんは後ろ向きからスタート。「ハイ」の声を合図に振り向いてもらい、左右どちらかに投げたボールを1バウンドなりノーバウンドでキャッチします。
そうすると、子どたちは楽しみながら、いつの間にかにボールの正面に入ることを覚えていきますよ。サッカー上手への第一歩です。

多種多様な動きを学べる運動教室もサッカーに役立つ!

僕がレッスンを行うリトルアスリートクラブでは、様々な道具を組み合わせたレッスンを取り入れ、いろいろな動きを楽しみながら経験してもらっています。

リトルアスリートクラブのアスレティックパートのレッスンより

レッスンの中では、「平均台まで走ってみよう」「クマさんになって動いてみよう」「平均台の上で飛行機になって10秒止まってみよう」など、遊びの要素を取り入れています。なぜなら、大人のトレーニング感覚で教えても子どもは理解できないですし、つまらないからです。子どもたちには楽しさが必要なんです。
すると、子どもたちは積極的に取り組み、自然と体の動かし方がわかるようになり、体の土台ができ上がっていきます。

最近、サッカーという競技に必要な俊敏性を鍛えるアジリティトレーニングが注目されていますが、リトルアスリートクラブのレッスンでも、ラダーやハードル、コーンなどを使いながら、そういった動きを楽しく身につけていきます。

ミニハードル、ラダー、コーンなどを使い、様々な動きを身につける

僕自身、年少から小学校6年生まで、いろいろな運動経験ができる運動神経向上目的の教室に通っていました。そのおかげで、体の使い方の基礎ができ、サッカーを始めたのは中学生になってからですが、その習得も早かったと思っています。
社会人になった今でもサッカーを続けており、日本をブラジルのようなサッカー大国にしたいという夢があります。
そのためにも、子どもたちにまず運動することの楽しさを知ってもらって、その中で「多種多様な動き」を身につけてサッカーにも生かしてほしいと思っています。将来的には日本を背負うプロサッカー選手が生まれたらうれしいですね。

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