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言いたいことを子どもに伝えるのに 言葉だけでなく「ま」と「表情」が大切な理由

子どもが言うことを聞いてくれない、言ったことを理解してくれない。幼児期のお子さんをお持ちの方ならそんな状況に陥ることもありますよね。もしかしたら、子どもとの会話の際、言葉に頼りすぎているのかもしれません。実は子どもとのコミュニケーションでは、「視覚的な要素」を上手に使うと効果的なのです。その理由とやり方をご紹介しましょう。

視覚情報はどれだけ重要なのか

私たちは五感から情報を得ています。その割合は、視覚87.0%、聴覚7.0%、嗅覚3.5%、触覚1.5%、味覚1.0%と言われています※。大人で87%なのですから、言葉での理解がまだ十分ではない未就学児であれば、「視覚情報」がより優位になりやすいですよね。

生まれたての赤ん坊を見ていると、興味の持ったものはじーっと見つめ、ひとまず口の中に入れてみる。つまりは視覚と触覚で88.5%ですね。これだけでも脳内への情報量は9割近くに達しているので、ほとんど認識できている状態です。

そう言った理由から、しゃべらずに伝えられることは多いのではないでしょうか?

※『屋内照明のガイド』(照明学会編/電気書院)、『感覚生理学』(岩村吉晃他訳,Schmidt 編/ 金芳堂)

情報の多くは視覚で得ている

言わなくても伝わる

実際の場面で考えてみましょう。
日本人同士なら言葉が共通ですから、当然のことながら言葉でコミニュケーションをとります。けれど、外国人との場合はどうでしょう? 「表情」を見れば、何となくこの人は困っているな、怒っているな、幸せそうだな、うれしそうだなというのはわかるものではないでしょうか? たとえ、言葉がわからなくても、何となく「表情」で理解して、自分の今までの経験の中で一番近しい状況を思い浮かべて話を理解しようとすると思います。その際に言葉が出てこなければ、メロディを口ずさんたりやジェスチャーなどを駆使して、言いたいことを伝えようとするでしょう。

日本人同士でも、会話中に「今の話、伝わってなさそうだな?」とか、逆に「理解してくれているな」などと感じることもあると思います。それは何を根拠に思うことが多いですか? もちろん相手に「今の話、わかった?」と聞くのも手ですが、会話というフロー(流れ)の中でその都度聞いていると時間がかかって相手の集中力がもたないですよね。

たいていの場合は、相手の「表情」を見ながら「眉間にしわが寄っているから、今の話には反対なのかな? 理解ができていなさそうなのかな」とか「うなずいているからわかっていそうだな」という判断なのではないでしょうか? 
そのとき大きな手掛かりになっているのは相手の「表情」。それを読み取っているわけです。つまりは、言わなくても伝わってくる「視覚情報」ですよね。

表情で察する

あえてコミュニケーションに「ま」をつくる

会話の中での「ま」を嫌う人は多いと思います。私もあまり「ま」ができるのは好きではありません。ただ、相手の立場からすると、理解している時間でもありますから、長いなと感じない程度に、極力「ま」をつくることにしています。

子どもの場合もそうです。私は子ども運動教室「リトルアスリートクラブ」で運動を教えていますが、以前担当していた年中・年長さんのクラスで、「今日は指示が入らないな」と感じた際に、使ってみておもしろいと感じた方法をご紹介したいと思います。

15分間という短い時間ではありますが、色ごとにやる内容をあらかじめ伝えたのちに、しゃべることをせずにレッスンをしました。
ほめるときは「笑顔でサムアップや指で丸印を出す」。

ほめるときは笑顔でサムアップ!

ダメだというときは「少し眉間にしわをよせて怖い表情をして目を見つめ続ける」ということを実施してそのレッスンは終えました。
その結果はというと、あれほど指示が入らない状態だった子どもたちの様子がガラッと変わり、指示が通るようになりました。

子どもたちはなぜ変わったと思いますか? こんな例から考えてみましょう。
聴こえてきている音楽が不自然な止まり方をしたらどう感じますか? 音楽が止まったことに対して気が向くこともあれば、その場に演奏者が居れば、その人のほうへ集中するかもしれませんね。そこには「ま」ができています。

レッスンの話に戻ります。子どもからしたら、いつも「言葉」というものが耳から入ってきているのに、この瞬間は「言葉」が聞こえない。すると、まずは「視覚情報」を頼りにすることが多いです。その集中がきれないうちに「優しい表情」や「怖い表情」をしてから言葉で伝えるようにすると、子どもにこちらの真意が伝わりやすくなってくると思います。
みなさんもぜひ、目つきなどの「表情」を意識して、「視覚情報」からの言葉で伝えることをしてみてください。

参考文献:『交流分析にもとづくカウンセリング』(倉成宣佳著/ミネルヴァ書房)

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