子どもに好きなスポーツを見つけてあげたい。そう願う親御さんは多いでしょう。そこで、トップアスリートたちに、いつどんなきっかけでそのスポーツを始めたのか、親は何をしてくれたのかなどをリトルアスリートクラブ代表トレーナー遠山健太がインタビュー。
今回は、スピードスケートの日本代表として3大会連続してオリンピックに出場した今井裕介さんの登場です。後編では5歳になる息子さんの運動子育てについてうかがいます。
「そうそう、全力が大事なんだよ!」 幼児期は思いっきり走る楽しさを知ってほしい
遠山:お子さんの運動子育てについてうかがいたいのですが…。息子さんとスケートをすることはありますか?
今井さん:まだです。今、5歳なんですけど、本人がまだスケートをやりたいと言わないので。自分自身も小学生になってから野球やスケートを始めたので、まだいいと思っています。
今は、元気いっぱい走り回ってくれればいいし、自転車に乗ってその爽快感を知ってもらえばいいと思っています。うちの嫁さんは、「早いうちから何でもやらせて、その中からピックアップしてもらうほうがいいんじゃないの?」って言うんですけど、僕はそう思えなくて。全力で走って、それがすごく楽しいんだということを知ってほしいという思いのほうが強いんですよ。
実際、息子は保育園から息をきらして全力で走ってくるんです。それを見て、「そうそう、全力が大事なんだよ!」って思っています。
遠山:それが大事だと思います。僕も小学校低学年くらいまでは、一つのスポーツに本気に取り組まなくてもいいと思います。
今井さん:幼稚園でも、いろいろな運動をさせるスゴいところがあるじゃないですか? 「そういうところに入れたほうがいいよ」って言う人もいますが、そこまでしなくてもと思っています。
遠山:僕も、子どもはワイワイ遊ぶのが一番がいいと思っています。

公園や自然の遊びの中で学べることがたくさんある
今井さん:公園に息子とよく行きますが、そこで遊ぶことでも運動能力を養えると思うんですよ。近くに自転車に乗れる場所があるので、そこに行って、息子の友だちも一緒に自転車を乗る練習をしました。みんなすぐに乗れるようになって、僕って教えるのが上手いんじゃないかと自信がつきました。自転車教室をやるのもいいな、なんて(笑)。
時間がとれれば遠出もします。息子が2歳ときには、千葉県にある僕のパワースポットへ連れて行きました。そこは、スピードスケート選手時代、清水宏保さんと合宿で使った山で、走って登っても20分はかかるところなのですが、2歳児が自分の足で登りきって感動しました! 故郷の長野では初スキーにも挑戦しました。
遠山:習い事はさせていますか?
今井さん:息子が保育園の友だちと一緒にやりたいというので、サッカー教室に通っています。本人は一生懸命やっていて、見に行くと、日に日に上達しているのがわかります。これから、いろいろなスポーツをやっていくと思いますけど、選択肢の一つとしてサッカーはコンタクトスポーツだからいいかなと思って。

小学生になったら子ども自身で好きなスポーツを見つけて極めてほしい
遠山:小学生になったら、何かスポーツをさせたいと思いますか?
今井さん:ええ。自然と息子に何かやってみたいものが出てくるんじゃないかなと思って、待っています(笑)。テレビでもいろいろなスポーツの放映があるから目にしますしね。
遠山:一緒に見るんですか?
今井さん:競輪選手だったころは、僕は競輪しか見ていなかったです。スケートですらもう見なかった。競技やっているときはそれが好きになりすぎて、ほかのものが目に入らなくなるんです(笑)。平昌オリンピックは競輪を辞めていたので、ゆっくり見られましたね。
遠山:一般人になっての観戦ですね。息子さんと一緒に?
今井さん:はい。「またスケートかよ」って言われました(笑)。
遠山:お父さんがオリンピックに出ていたのは知っているんですか?
今井さん:それは知っていますね。でも競輪の選手のイメージが強いみたいです。
遠山:息子さんにスポーツの道に進んでほしいと思っていますか? それとも楽しむ程度でいい?
今井さん:やるならその道でとことん極めてほしいですね。自分もその畑しか知らないので。遅い、早いはあるかもしれないけれど、ある年齢になれば、息子にやりたいものが出てくると思うので、まず、それを見つけてもらう。そして息子が本気になったら、親としてサポートできることに情熱を注ごうと思っています。

ファーストオリンピックを大切に。そこに向けて全力投球してほしい
遠山:ご自身のアスリート経験から子どもたちに伝えたいことはありますか?
今井さん:オリンピックを目標にするなら、ファーストオリンピックを大切にしてほしいということです。僕の場合、「今回のオリンピックがダメだった、それじゃ次に頑張る」というふうに、3回もずるする引きずってしまった。その結果、スケートの次の人生を考えたときに、選択肢の幅が狭まってしまったと思います。
遠山:最初のオリンピックにかけるということですね。
今井さん:そうですね。もし、自分の子どもがオリンピックを目指していて、最初のオリンピックまでに4年あるとするなら、その期間はスケートならスケートだけを必死で頑張る。このときの、「1回しか出られない、ここで頑張るんだ」という気持ちが大事。長い人生の中で見たら、たかが4年ですから。
オリンピックについてまだ何も知らない、出られることが楽しくて仕方がないというときに、すべて集約して結果が残せるオリンピックだったらすごくいいなと思うんです。
そこで、さらに競技人生を続けようと思ったら、スポンサーもつき、余力があって、また違った次のスケートが考えられると思います。
前編はこちら↓↓↓
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