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遠山健太の運動子育て対談 アスリートに聞く好きなスポーツの見つけ方

【元アーティスティックスイミング選手 松永桃奈さん-前編-】音楽に合わせて泳ぐのが楽しくて! 仲間にも恵まれて小1からずっと夢中です

子どもに好きなスポーツを見つけてあげたい。そう願う親御さんは多いでしょう。そこで、トップアスリートたちに、いつどんなきっかけでそのスポーツを始めたのか、親は何をしてくれたのかなどをリトルアスリートクラブ代表トレーナー遠山健太がインタビュー。
今回は、元アーティスティックスイミング(AS)選手 、松永(旧姓川口)桃奈さんの登場です。前編では、ASとの出会い、その魅力についてうかがいます。

松永さんは小学生でASを始め、大学生まで日本のトップ選手として活躍!

松永桃奈さんは神奈川県平塚生市まれ。0歳(7か月)のころにベビースイミングを始め、小学1年生入学時には4泳法をマスター。次のステップとして、元オリンピアンの小谷実可子さんの教室でASを始め、音楽に合わせて泳ぐ楽しさを知ります。
その後、競技として極めたいと別クラブに移り、大学入学時には、多くのオリンピアンを輩出してきた「東京シンクロクラブ」へ。
そのチームメイトとともに、日本選手権で銅メダルを獲得。ナショナルBチームのメンバー入りも果たしました。
大学3年生で競技生活に区切りをつけ、大学卒業後は就職先で指導者の道へ。その後、結婚・出産を経て現在は6歳、4歳、2歳、0歳(6か月) になる4人のお子さんのお母さんです。
その間ずっと指導者としてASに関わっています。

大学時代、東京シンクロクラブとして2007年の日本選手権に出場し、銅メダルを獲得。
大学時代、東京シンクロクラブとして2007年の日本選手権に出場し、銅メダルを獲得。
遠山と松永さんとの出会いは、遠山がJISS(国立スポーツ科学センター)に勤務していたころ。当時、東京シンクロクラブの一員として地下プールで練習していた松永さんたちのウォーミングやトレーニングを担当していました。

おなかにいるころから水の中に! ASを始めたのは小学1年生のとき

遠山:いつごろからASを始めたのですか?

松永さん:ベビーのころから水泳をやっていて、小学1年生で4泳法(自由形、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライ)が泳げるようになったので、次のステップとしてASをやることになったようです。

遠山:選んでくれたのはお母さん?

松永さん:そうです。母は水泳の選手ではないですが、とても運動好き。私がおなかにいるときからマタニティスイミングをやっていたようです。ASを始めるときは小谷実可子先生(ソウルオリンピックでソロ、デュエットとともに銅メダル獲得)の教室を選んでくれました。

遠山:ASを初めてやったときのことは覚えていますか?

松永さん:実はよく覚えていないんです。ただ、「泳いでいるんだか、溺れているんだかわからなくて、助けていいのかもわからなかった」とよく言われます(笑)

遠山:小さいときは、ほかにも何か運動をしていたんですか?

松永さん:習い事はいろいろやっていました。競泳も続けていまし、バレエ、新体操、タップダンスなども。その中で最後に残ったのがASでした。

遠山:ASの教室ではどんなことをするのでしょう? やってみたい憧れの技などはありましたか?

松永さん:教室では泳ぐことと、ASの基本練習ですね。スタンディング(立ち泳ぎ)の練習、手をかく練習、潜水の練習などいろいろです。音楽に合わせて泳ぐ「リズム泳ぎ」もありました。始めたころは、お姉さんたちがやっている、くるくる回るスピンに憧れました。だから、その練習が始まったときはうれしかったですね。

遠山:大会などにも出場しましたか?

松永さん:大会というよりか、発表会ですね。1年生のとき、黒い水着で黒猫のタンゴを踊りました。 猫のように泳ぐ振りが印象的でした!

小学1年生の最初の発表会。黒猫のタンゴを踊った
小学1年生の最初の発表会。黒猫のタンゴを踊った

ASはレッスンメニューが多い。本格的に極めたいなら小学生から始める

遠山:運動は好きでしたか?

松永さん:はい。特に泳ぐことが大好きでした。ASを始めてからしばらく、競泳とASを両方続けていましたのですが、私はタイムを競う競泳よりも、音楽に合わせて泳ぐほうが好きとわかったので、最終的にはASを選びました。

遠山:それが何歳のときですか?

松永さん:小学5年生のときです。そのとき、教室も変えました。最初通っていた実可子先生の教室は芸術性を求め、それを発表会で楽しく表現しようという方針でした。おかげで、シンクロを楽しいと思うことができました。ただ、次のステップとして競技としてASを頑張ろうと思ったんです。

遠山:競技として始める場合、何歳くらいが多いのでしょう?

松永さん:中学生から始めたのでは練習についていけない場合が多いので、小学校3、4年生から始める人が多いのではないでしょうか。

遠山:早く始めたほうがいいのはなぜですか?

松永さん:水の感覚とかでしょうか。それに、練習しなくてはいけないことがたくさんあるんです。泳ぐのはもちろん、倒立の仕方や手のかき方を練習したり、まっすぐの感覚を覚えたり。さらに、音楽に合わせて体を動かす練習、脚のラインをきれいに見せる練習など、数え切れないほどのメニューがあります。

音楽に合わせて泳いで表現する。それがASの楽しいところ

遠山:大学時代は日本で1、2位を争うトップクラブ「東京シンクロクラブ」に在籍していましたよね?

松永さん:そうです。私が入ったときは原田早穂選手などオリンピック選手が在籍していました。大学は日大ですが、練習はもっぱらクラブチームでした。

遠山:当時、 JISSにAS用のプールが地下にあって、東京シンクロクラブもそこで練習していたんだよね。我々、トレーナー陣は、朝のウォーミングアップを頼まれていたんだけど、僕たちにおかまいなしに指導陣から怒号がとんで、緊張したのを思い出します(笑)。選手たちはプール練習が終わってトレーニングルームに来るときは、みんな、死にそうな顔をしていた!

松永さん:そうですね。 トレーニングルームにはASの指導陣はいなかったので、トレーナーの方々に関係ない話を聞いてもらったりして。ちょっとした息抜きの時間でした(笑)。

遠山:松永さんは特別メニューもこなしていたよね?

松永さん:ASは魅せる競技でもあるので、スタイルも重視されるんです。私の場合、やせなくちゃいけなくて、減量のためのトレーニングしていました。今思うとストレスがあって、それでやせられなかったのかも(笑)。逆に、食べないとやせてしまう体質の人はかなりの量を食べる必要があります。

遠山:ASの楽しさはどんなところですか?

松永さん:私は泳ぐことが大好き。それを「音楽に合わせてできる」というのがさらに楽しいところです。基本練習もいろいろあるんですけど、ソロにしてもチームにしても、曲をかけて練習する時間は苦しいんですけど、楽しかったですね。

遠山:衣装とかメイクなど、競泳競技とは違う要素もありますけれど、そこは?

松永さん:音楽に合わせて泳ぐことが好きだったので、どの曲を使おうか考えるのは好きでした。衣装はイメージが決まったら、作るのは母と祖母の担当。デザインを起こして型紙を作って生地を選び、祖母が縫って母がスパンコールなどをつける。母と祖母には感謝です!

遠山:それはすごい。知らなかった。チームの場合はさすがに違うでしょう?

松永さん:同じです。デザイン決まったら、だれか一人が作って、それに対してコーチが修正を加えてひとつ見本を完成させる。それをお手本にみんなそれぞれが作り始めます。できたところで位置がずれていないかなどのチェックをします。

遠山:親御さんはずっと応援してくれていたのですか?

松永さん:そうですね。衣装を作ってくれたことはありがたかったですし、小学生のときは、始発電車では間に合わない朝5時半から練習があったため、プールまで送ってもらっていました。また、下に兄弟が2人いるんですけれど、母が私の試合で付き添いに行っている間は、残る兄弟の面倒は父がみてくれるなど、ずっと応援してもらっていたと思います。

遠山:お金のかかる競技でしょうか?

松永さん:そうですね。けっこうかかると思います。月謝とプール代、衣装代など。私はクラブに通うのが遠かったので、交通費もかかりました。

高校時代の演技の様子。
高校時代の演技の様子。

身長差を感じさせないように! 高さを出すことに磨きをかけてきた

遠山:ASはどんな運動能力が必要なのでしょうか? 誰でもできるものでしょうか?

松永さん:水が好きで泳ぐのが好きだったらできると思います。「水中でのさまざまな動きを習得したい」とか「水中での表現を楽しみたい」と思う人におすすめです。

遠山:ASは技の完成度、同調性、構成芸術的な表現などを競う競技ですよね?どんなところを意識していましたか?

松永さん:技の高さやラインの美しさなどです。たとえば、同じ倒立でも高いほうが評価されます。私は身長が低いので、その分、高さを出すように、脚が長く見えるように意識してきました。高さが出せるのが自分のいいところだと思って、背の高い人には負けないようにそこを極めようと思っていました。

遠山:今はナショナルチームの選考の際、身長減点というのがありますよね?

松永さん:はい。身長が165cmより低い場合、1cmにつき1点減点されます。 世界でメダルを目指し戦うためには、チーム全体のスケールの大きさ、ダイナミックさが不可欠。 身長が基準に満たない選手は、より高いパフォーマンスが求められるというわけです。私はそこまで身長はなかったのですが、大学1、2年のとき、ナショナルBチームに入れていただいていました。

泳ぐのって楽しい。次のチャレンジの場はマスターズ!

小谷実可子さんプロデュースのカウントダウンのショー 「AQUA Fantasy」に出演したとき
小谷実可子さんプロデュースのカウントダウンのショー 「AQUA Fantasy」に出演したとき

遠山:今はAS を教えているんですよね? 自分でも演技をすることはありますか?

松永さん:大学で競技生活を終え、そのあとは教える側にまわりました。4人の子どもがいるんですけど、出産前後3、4か月をのぞいてずっとプールに入っているんです(笑)。とはいえ、指導がメインなので、自分のためにそんなにしっかり泳ぐ時間はとれませんが、泳いでいるとリラックスできますし、気持ちがいいですし。今度、マスターズに出たいなと思っているんです。

遠山:マスターズ水泳選手権には元選手や水泳愛好家が参加するんですよね? 出ようと思ったきっかけは?

松永さん:泳ぐのってやっぱり楽しいから。4番めの子が生まれる前、実可子先生のカウントダウンのショー 「AQUA Fantasy」に出演させていただいて、イルカのプールで、照明やウォーターカーテンの演出や生歌の中での演技など、今までとまた違うASを体験しました。子どもたちが見に来てくれて喜んでくれたこともうれしくて、新たな挑戦をしたくなったんです。

「AQUA Fantasy」

「AQUA Fantasy」

後編では、指導者、そして親としての松永さんの思いに迫りますのでお楽しみに!

後編はこちら↓↓↓
【元アーティスティックスイミング選手 松永桃奈さん-後編-】泳ぐことが大好きだから、海やプールでのスイムイベントに家族でチャレンジしていきたい!

松永さんから学ぶ
子どもにぴったりのスポーツを見つけるためのヒント

  1. 子ども自身が「好き」と思えるスポーツを探させる
  2. 楽しい!と思えば、子ども自身が自ら頑張れるようになる。親は応援する立場に
  3. 泳ぐのが好き。さらに「水中でのさまざまな動きを習得したい」、「水中での表現を楽しみたい」という人に、ASはおすすめ
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