「うちの子は走るのは苦手なの。速く走れるようになるにはどうしたらよいのかし ら?」。そう考える親御さんは多いでしょう。今回は、走るときの足の運び、腕の振り、姿勢をチェック! 速く走れない原因を探り、それを改善するための声がけや練習法をわかりやすくご紹介します。走り方が変われば、自然とかけっこは速くなっていきます。運動会対策としてもおすすめです。
足の運びをチェック! 足の接地時間を短く、タッタッタと走れているか?
速く走るためには、できる限り、足が地面に接地している時間を減らすことがポイントになります。
もし、お子さんの走り方を見て、足裏全体をベタベタ着いて走っているようであれば、足裏の使い方を改善する必要があります。そのためのプロセスをご紹介しましょう。
STEP1 子どもに考えさせる
「速く前に進むためには足を地面にベタっと長く着いているほうがいいかな? それとも速く地面から足を離したほうがいいかな?」
と問いかけて、子どもに考えさせます。すると多くのお子さんが後者を選びます。
STEP2 子どもにイメージさせる
次は、「速く地面から足を離す」とはどういうことか、子どもがイメージしやすい言葉で説明してあげます。
「ベタベタではなくてタッタッタと走ってみよう」
「つま先で走ってみよう」
「地面が熱いフライパンの上だと思って走ってみよう」
子どもによって、どの表現がピンとくるかは違うので、いろいろ試してみてくださいね。
「走る」という動作を分析してみると、片足ジャンプ(ケンケン)を交互に連続しておこなっています。実際、瞬発的にジャンプやケンケンができる子は走るのも速い傾向にあります。ぜひお子さんと一緒に遊びながらジャンプ、ケンケンをやってみてください。
縄跳びもおすすめですよ!
【走る力をつけるためのドリルはこちらへ】
速く走るのに必要な力って何? かけっこに役立つ!おうちでできるドリル
腕振りをチェック! ひじを曲げて正しく振れているか?
次のポイントは腕振りです。
腕振りが大切な理由は、いろいろありますが、なかでも重要なポイントが「腕振りによって肩甲骨と骨盤の連動が生まれる」ということです。
正しく腕を振れれば、骨盤がスムーズに動き、より効率よく脚が前に出るようになります。その上で、腕を大きく振れば、脚がより前に出て歩幅が広くなりますし、速く振れば脚がより速く前に出やすくなります。
速く走る=脚の歩幅(ストライド)×脚の回転速度(ピッチ)
なので、脚をより速く、より遠くに出せると、速く走ることができます。
そのために大切になるのが腕振りなのです。
子どもたちによく見られる腕振りの課題をいくつかあげてみます。お子さんの腕振りをチェックしてみてくださいね。

CHEK①腕を振るときひじが伸びていないか
腕振りの理想はひじを90度くらいに曲げた状態を維持して振ること。ひじが伸びてしまうと、遠心力によって次の腕振りが遅れてしまい、前に速く進めません。
【改善法】
「小さく前習え」の形でひじを曲げ、まずは両腕一緒に振りましょう。それができるようになったら、交互に振ってみます。手を後ろに振るときひじが伸びてしまうケースが多いので、そこをチェックしましょう。
ひじを曲げるコツがつかみづらい場合、「汽車ポッポ」の要領で両手を動かしてみましょう。
CHEK②腕を横に振っていないか
女の子に多いのが、ひじは曲がっているけれど、腕の振りが横になってしまうパターン。腕を横に振るということは、わきが開いた状態なので、体が必要以上にねじれてしまい、前に進む効率が悪くなってしまいます。
【改善法】
わきをしめて、腕を前後に振ってみましょう。
CHEK③手のひらを強く握りすぎていないか
手のひらをグーにしてギュッと握ってしまうと、余計な力が入り、スムーズに腕を振りにくくなります。その結果、走るスピードも落ちてしまいます。
【改善法】
ふわっと握るか、パーに開いて振りましょう。
走る姿勢をチェック! 体がまっすぐになっているか?
速く走るためには姿勢も重要です。姿勢を意識することでより速く走ることができます。
しかし、子どもに正しい姿勢を教えるのは意外と難しいものです。

ここでは、わかりやすく教えるためのプロセスをご紹介しましょう。
STEP1 どんな姿勢が速く走れそうか考えてもらう
「どのような姿勢で走れば速く走れるかな?」と問いかけて、子どもたちに考えてもらいます。多くのお子さんからは「背中をまっすぐにする」とか「背筋をピンとする」などの答えが返ってきます。
そうです、ここで意識してほしいことは体をまっすぐにすることです。
STEP2 体をまっすぐにすると速く走れる理由を考えてもらう
次は、なぜ体をまっすぐにしたほうが速く走れるのか、子どもたちに考えてもらいましょう。
「どうしてまっすぐがよいの?」という質問は、子どもにとってはかなりの難問。実際、答えられない場合が多いのですが、ここでは答えられなくても、答えが間違っていてもOKです。考えてみることが大切なのです!
中にはこんな答えも…。
「まっすぐのほうが見た目がかっこいいから」
「陸上選手がまっすぐにしていたから」
STEP3 体がまっすぐにすると速く走れる理由を教える
子どもに考えてもらったあとは、種明かしです。その理由を教えてあげましょう。
体をまっすぐにする一番の理由は、地面からの反発力(跳ね返る力)を効率よくするためです。
前にも話しましたが、「走る」という動作は片足ジャンプの連続で成り立っています。つまり、地面から跳ね返る力をもらい、「より速く、より遠くに進む」ことで速く走れるようになります。その跳ね返る力をたくさんもらうために体をまっすぐにするのです。

STEP4 実際にやってみて体感する!
頭でわかったら、次は実践編。体を動かして体感します。
その場でジャンプをします。
①と②のどちらが高く跳べるかやってみましょう。
①「気をつけ、背筋をピンでジャンプ!」
②「背中を丸めてジャンプ!」
体をまっすぐにできない場合は少しアドバイスをしてあげます。
「体が棒になるように」
「東京タワーのように」
「頭からひもが出て上に引っ張られるように」
ここでもどんなイメージがお子さんに当てはまるのかいろいろ試してみてくださいね。
お子さんの年齢に合わせて、よりわかりやすいイメージで教えてあげましょう。
実際にやってみると、ほとんどのお子さんが「①のほうが高く跳べる」と答えます。
体をまっすぐにする理由を説明し、実際に体験してもらうことで、自分で考える力、理解する力がつきます。こうやって、やらされる運動ではなく、子どもたちが自分でやる運動にしていくことが大切だと思います。
考えてから動くことで、主体的に積極的に取り組んで全力を出しやすくなります。
STEP5 頭の位置にも注意!
もう一つ姿勢で気をつけたいところがあります。それがあごです。走っているときにあごが上がってしまうと頭の位置が後ろになってしまいます。頭は重いので、頭が後ろになってしまうと前に進みにくくなってしまいます。
その状態を改善しようとよく使うのが「あごを引いて」という言葉ですが、実は、子どもにとって、ちょっとわかりにくい言葉なのです。もし、理解できていないようであれば、「あごを首にくっつけるように」、「うん、とうなずくように」など
子どもがわかりやすいイメージで伝えてあげるとよいでしょう。
かけっこで一番大切なのは、全力で走れるようにすること!
いくつか走り方のポイントをお伝えしてきましたが、子どものかけっこでは「全力で走る」ことが一番重要だと感じます。
子どもはなかなか自分の力を限界まで出すことができません。どんなに走り方の技術があっても全力を出せなければ意味がありません。逆に技術がなくても力いっぱい全力で走れる子のほうが速いです。
全力で走れるようにするには、日々の運動習慣をつけることです。ふだんから習慣的に運動を続けることで速く走ることにつながります。
外でたくさん走り回る、何かに登る、不安定なところに乗る、ジャンプする、鬼ごっこやケンケンで遊ぶ、かけっこ競争するなど、とにかくたくさん体を動かしましょう。

最後に一つ。
かけっこの練習をしていると、つい、「できた」、「できない」、「勝った」、「負けた」という結果ばかりに目が行きがちですが、実はそこまでの過程がとても大切です。
「たくさん練習したからできるようになった!」
「できないけどあきらめずに練習した!」
「勝負には負けてしまったけど最後まで頑張った!」
「いろいろな友だちと仲良くなれた!」
目に見えないけど重要な部分にも目を向けてあげてくださいね。
【「スタート」については】
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