走るという動作はさまざまな運動に欠かせないもの。子どもたちの中でも足が速い子は一目置かれ、みんなから憧れの存在になることもありますね。 そこで、かけっこで速く走るために必要な力を育むドリルをいくつか紹介します。日ごろの遊びの中に取り入れてみてくださいね。
「考える→運動する」が上達の近道
速く走るために必要な力についてお話する前に、まず、走るとはどのような動作なのか考えてみましょう。
私は「リトルアスリートクラブ」という運動教室で子どもたちに教えていますが、レッスン内で「歩くことと走ることの違いは何だと思う?」と聞くことがあります。 皆さんも、お子さんに聞いてみてください。子どもたちからは、「歩くのは遅くて、走るのは速い」とか、「歩くときは足がゆっくり前に出て、走るときは速く前に出る」など、いろいろな答えが返ってきます。
答えは合っていても、間違っていてもどちらでもいいのです。ここで重要なのは、子どもたち自身がまず考えてから運動すること。
ただやらされているだけの運動と自分で考えたうえでおこなう運動とでは、成果が確実に変わります。 これは走る運動だけでなくすべての運動に当てはまります。ぜひ、いろいろなことを考えさせたうえで運動をしてほしいと思います。 ふだんから考えて動けている子は想像力も豊かになりますし、上手になるためにはどうすればよいか、自分で考えるようになるので上達も早いのです。
速く走るのに絶対必要なのはジャンプ力、瞬発力
さて、歩くことと走ることの違いを簡単に説明しましょう。歩くは片足が地面に着いている状態で、走るは両足が地面に着いていない状態です。大人でも「へーっ」と思う方も多いのではないでしょうか?
つまり、走るとは、片足ジャンプ(ケンケン)を交互に連続しておこなう運動ともいえます。走るという運動は簡単そうに見えて、とても難しい運動なのです。そう考えると、走るのに必要な力が何か、ちょっとわかってきますね。
絶対必要となるのが、ジャンプ力、瞬発力です。片足でバランスをとる力も大切です。こういった力は、遊びの中でジャンプしたり、ケンケンしたり、不安定な場所にのぼったり、歩いたりして自然と鍛えられていくものです。
足を速くしたかったら、まず歩かせる
たとえば、階段。意識していないかもしれませんが、上ったり下がったりするとき、片足ずつ踏み込んだり、バランスをとったりしています。じつはこれも走ることに役立ちます。
けれど、実際はエレベーターやエスカレーターを使い、階段を利用する機会はあまりないのではないでしょうか? 大人にとってもいい運動になりますから、機会を見つけて階段を活用してみてください。子どもは意外と階段は好きなものです。
また、走ること以前に、最近では、歩くことも少なくなっています。親御さんの負担を考えると、仕方のない部分もあるのですが、1歳半から2歳で歩けるようになったら、できるだけベビーカーを使わないのが理想です。歩く機会が少ないと、土踏まずや足の指の力が育っていきません。
歩くことができなければ、当然、走ることもできません。足の速い子に育てたいと思うなら、お子さんをなるべく歩かせ、たくさん外遊びをしてあげてください。鬼ごっこなんて、かけっこを速くするのに最適な遊びですよ。鬼ごっこで走り回っているなかで、どうすれば速く走れるのか、どのように体を動かして走ればよいのかが身についていくのです。
親子で挑戦! バランス力や瞬発力をつけるドリル
走ることに必要なバランス力や瞬発力、ジャンプ力を育むドリルをいくつか紹介しましょう。おうちでもできるので、お子さんと一緒にチャレンジしてみてください。
●ひこうきバランス
筋力、柔軟性、バランス力など、運動に必要な要素を含む動きです。
まず、片足立ちになります。
静止できたら、写真のようにバランスをとりながら、体を地面と平行になるまで倒してみましょう。
①まずは得意な脚で10秒できるかな?
②反対の脚でも10秒できるかな?
できた人はさらにレベルアップしてみて!
③手を横からバンザイにしてバランスを保てるかな?
④手を床にタッチして戻れるかな?
⑤ ④を10回続けてできるかな?
●足を持ってペンギン歩き
おひざで歩く「ペンギン歩き」の難易度を上げたものです。
足を持つことで、よりバランス力が必要になり、腹筋と背筋にも力が入ります! 難易度が高めなので、5歳以上のお子さんはぜひチャレンジしてみてくださいね!
●ケンケン
ケンケンでは、速く走るための瞬発力やバランス能力が鍛えられます。できるようになったら、高く跳んだり、前に大きく跳んだりと、お子さんと競争してみましょう。
●回転ケンケン
ケンケンをしながら回転します。回転することで、体の傾きや揺れなどを感じて、バランスを保つ力がつきます!
●うさぎさんで遠くにジャンプ!(立ち幅跳び)
跳躍力も走るときに必要です。ジャンプも練習してみましょう。大きくジャンプするためには、腕振りや足の蹴りがポイントになりますが、これが走るときにも生きてきます。
前方の地面に○(まる)を書くなど、目標をつくってもよいですね。
ポイントは3つ!
①腕を上げてバンザイの姿勢をとる
②ひざをしっかり曲げ、腕は後ろに引く!
③腕を思い切り前に振上げてジャンプ!
●連続で障害物をジャンプ!
障害物を置いて連続で跳び越えていきます。ポイントは背筋をまっすぐ、速く跳び越えていくこと。腕をしっかり振って跳ぶことで、走る際にもしっかり腕が振れるようになりますよ。
そのほか、上にジャンプする遊びもおすすめです。
お父さん、お母さんが手を上げ、そこを目がけてジャンプしてタッチを繰り返します。手の位置をもっと高くしたり、左右に動かしたりと、アレンジしてみてください。
また、タンバリンなどの音が出るものをつるしておいてそこに向けてジャンプ!というのも、子どもは楽しいと思います。
運動を上達させたいのでなら、習慣化していくことが大切。 五輪で活躍する世界的なトップアスリートでさえ、何年も練習を続けてやっと結果が出るのですから。